排卵誘発剤の使いすぎにより、卵巣が腫れることがあります。これによって現れる症状を卵巣過剰刺激症候群とよびます。
卵巣過剰刺激症候群には次の3つのタイプがあります。

①水湿・痰湿タイプ
この場合、気を補って余分な湿を取り除きます。
②お血タイプ
この場合、血のめぐりを良くして血の滞りを取り除きます。
③気陰不足
この場合、気を高めて陰液を増やすことにより、体のバランスを整えます。

これらの状態では、排卵誘発剤を継続することはお勧めできません。無理に使い続けると、卵巣の過剰刺激による副作用が出たり、卵巣の反応が悪くなりいくら刺激しても排卵しない状態を引き起こしかねません。

この場合、漢方薬により卵巣の状態を整えることが大切です。
その後漢方薬による周期療法と、必要に応じて排卵誘発剤を併用して、体に無理のない排卵を促すと良いでしょう。

       ~国際認定中医師 鳥居英勝~

排卵誘発剤治療によって、次の症状が出ることがあります。

①基礎体温の高温期が高くなる。
②体重が増える。
③おりものが減る。
④月経量が減る。

①は陰虚火旺による症状です。この場合、一時的に休薬して補腎陰剤を服用すると体のバランスが整います。

③④は子宮内膜が薄くなったサインです。この状態を放っておくと、血虚と血おにより着床しずらくなるのでしかるべき対応をとるべきです。まず。一時的に休薬し、月経期に活血剤、卵胞期に補陰補血を施すとよいです。

       ~国際認定中医師 鳥居英勝~

黄体機能不全(黄体ホルモン分泌不足)が起きている時は・・・
①腎の機能を高め、温かな子宮環境を保つ
②気血を補う
方法をとります。
これを『温補腎陽・益気養血』といいます。

周期療法を行う場合、
高温期:腎陽を高めて子宮を温め、子宮内膜をやわらかくする。また、気血を補う。
低温期:腎陰を補って卵胞の発育を助ける。また、血を補う。
方法をとります。
※黄体期の調整でうまくいかないこともあります。その場合、卵胞期に卵胞が十分に発育しなかったことが原因である場合があるので、卵胞期に腎の機能を高め、卵胞の発育と成長を助ける漢方薬を用いると良いのです。
また、ストレスを受けて体温が上下したり、PMSが発現する場合には、理気を施します。

高温期が11日以下と短かったり、体温が上下して安定しない。高温期に入って4~5日目に体温が下がる。高温期の体温が低かったり、低温期の+0.3℃未満などの場合、黄体機能が低下していることがあります。

       ~国際認定中医師 鳥居英勝~

排卵障害が起きているときの対処法は・・・
①腎の機能を高める
②気と血のめぐりを改善する
方法をとります。これらを合わせて、『補腎活血促排卵』といいます。
※原因が卵胞の発育不良の場合は、卵胞期から調整する必要があります。

低温期から高温期への体温の移行が、だらだらと階段式に3日以上かかったり、排卵期に強い痛みがある場合は、『排卵障害』が起きている可能性があります。

~国際認定中医師 鳥居英勝~

何年か前に、中国で生産された生薬に残留農薬が含まれていたことがニュースになったことがあります。
今、日本で使われえている漢方薬(医薬品)は安全なのでしょうか?

結論を言うと、安全です。
漢方薬の原料は生薬です。産地は主に日本と中国。それ以外にも東南アジアや中南米から輸入されるものもあります。
製薬会社は原料調達の際に、『残留農薬が基準を満たしている』ことの証明書がついた生薬のみを生薬卸業者から調達しています。
そして、製剤後の漢方薬についても必ず検査をして、基準をクリアーしていることを確認しています。

具体的には・・・
・原料調達の際に、『要注意とされている12種類の生薬』についての証明書を確認。
・上記の12種類の生薬を含む漢方薬については、製剤後に全て検査を行う。

ここで、12種類を含まない漢方薬についての安全性が気になりますが、『12種類を含む生薬について安全が確認されれば、そこに含まれる12種類以外の生薬の安全も確認できたことになり、それを考えると全ての漢方薬が安全といえる』と判断されるようです。

以上のことから、日本で医薬品として認可されている漢方薬は、安心して服用することが出来ます。

今後、基準が厳しくない健康食品レベルの生薬製剤についての安全基準も強化されて行くことと思います。

       ~国際認定中医師 鳥居英勝~

『寒けを感じ寒冷を嫌う』ことは、外感・内傷をとわず良くみられる症状です。歴代の文献では、『畏悪風感』や『悪寒』と称されています。
よく風邪の引き始めに寒気を感じることがありますが、これも悪寒の症状です。

悪寒は大きく次の7つに分類されます。
①風寒束表・・・風寒の邪が体表部に進入し、衛陽を欝閉するためにおこる症状です。
②寒中少陰・・・寒邪が虚に乗じて直接身体の深部に侵入するために起こる症状です。
③陽虚陰盛・・・過労や慢性病による消耗で臓腑の機能が衰え、陰寒が生じることによっておこる症状です。
④陽盛格陰・・・邪熱が裏に深く入り込んで陽気が閉じ込められ、陽気が外部に達することができないためにおこる症状です。
⑤痰飲内停・・・痰飲が停滞しておこる症状です。
⑥そう瘍・・・火熱の邪の外感、脂っぽいものや味の濃いものの食べすぎ、外傷などによって、熱邪が停滞して経絡を塞ぐためにおこる症状です。
⑦寒げき・・・元々陽が虚していて湿が溜まりやすい体質の人が、げき邪を受けて、陽気の流れが障害されることによっておこる症状です。

それぞれの特徴は・・・
①悪寒、発熱、無汗、頭痛、身体痛、口渇がない、舌苔が薄白、脈が浮緊
②悪寒、発熱がない、全身倦怠感、四肢が冷える、元気がない、嘔吐、不消化下痢、尿が薄く量が多い、舌苔が淡、舌苔は薄、脈が沈
③悪寒、四肢の冷え、倦怠無力感、話すのがおっくう、味がない、口渇がない、尿色がうすい、泥状~水様便、顔色が白い、舌質が淡、脈が沈遅で無力
④悪寒、四肢の冷え、口渇がつよくよく冷たいものを飲みたがる、胸が熱苦しい、腹部に他覚的な灼熱感がある、咽の乾燥感、口臭、尿が濃い、便秘、舌質が紅、舌苔が黄、脈が沈伏
⑤悪寒、肢体がだるい、胸や腹が張って苦しい、食欲不振、口渇はあるが飲みたくない、舌苔がじ・脈が滑
⑥悪寒、甚だしければ悪寒戦慄、発熱、そう瘍局所の腫脹疼痛と熱感、尿が濃い、便秘、舌苔が黄、脈は弦数あるいは洪数
⑦間歇的な悪寒の発作があり、発熱がないか微熱、疲労倦怠感、胸脇部のひ満感、舌苔は白じ、脈は弦遅

治療方針は・・・
①辛温解表・発散風寒
②扶陽抑陰
③温陽散寒
④清裏しゃ熱
⑤通陽化痰
⑥清熱しゃ火解毒
⑦散寒たいげき

使用する方剤は・・・
①麻黄湯加減
②四逆湯
③右帰飲、理中湯、桂枝甘草湯
④白虎湯、じょう気湯
⑤苓桂じゅつ甘湯、甘遂半夏湯、大青竜湯、小青竜湯、木防己湯
⑥五味消毒飲、仙方活命飲
⑦柴胡桂枝湯加常山・草果

この様に、『寒け』のタイプは色々あります。弁証により正しく証を把握し、適切な方剤を利用して対処することが大切です。

~国際認定中医師 鳥居英勝~

『生理が数ヶ月ない』ことを、中医学では閉経といいます。
ここでは、加齢により生理が来なくなる“閉経”は含みません。また、数ヶ月に1回生理がくることが正常リズムな方もおられるので、それも区別します。

閉経のタイプは、大きく次の5つに分けられます。
①脾虚型・・・消化吸収や水分の代謝にかかわる臓器が弱っているタイプ
②腎虚型・・・先天的あるいは何らかのストレスにより、身体のエネルギーの源である腎が弱ったタイプ
③血虚型・・・血液が不足したタイプ
④気滞血お型・・・気のめぐりが悪くなり、血が滞ったタイプ
⑤寒湿凝滞型・・・冷えと余分な水分が身体の中に溜まっているタイプ

それぞれの特徴的な症状は・・・
①食欲がない、お腹が張る、便がゆるい、食べても味を感じにくい、顔色が黄色く白っぽい、気持ちも身体も疲れている、手足が冷える、むくみがある、どきどきする
②初潮が来るべきときに来ない、初潮が来ても量が少なく次第に無月経になる、眩暈、耳鳴り、腰がだるく足に力が入らない、頻尿
③顔色が萎えた黄色、めまい、どきどきする、不眠、大便が乾燥 
ひどくなると:両頬が赤くなる、手のひらと足の裏があつくなる、寝汗、どきどきして眠れない、皮膚が乾燥する、血の混ざる咳が出る、咳が止まらない、唇が紅くなる
④いらいらして怒りっぽい、憂鬱、下腹部に脹痛があって押すと痛い、胸が詰まる感じで脇の方が痛む、
⑤下腹部が冷えて痛む、胸が苦しい、身体と手足が冷える、便が緩い、顔色は青白い、気持ち悪い、白い下り物がたくさん出る

舌の状態は・・・
①淡い、白くて厚い苔がある
②淡い、苔が薄い
③淡い、苔がない
④舌のふちに黒い斑点がある
⑤暗い、白くて厚い苔がある

脈の状態は・・・
①緩弱
②沈細
③細緩ひどくなると細数
④沈弦
⑤沈緊あるいは濡緩

治療方針は・・・
①補脾益気・養血調経・・・消化吸収に関わる臓腑を元気にして、血を増やし血の巡りを整える
②補腎気・調衝任・・・腎を元気にし、血のめぐりを整える
③補血・・・血を補う
④行気活血・去お通経・・・気と血のめぐりをよくして、血の滞りをなくし、血の通りをよくする
⑤温経散寒・和血凝滞(寒に傾く時)・・・血を温め、滞りをなくす。
燥湿化濁・理気行滞(湿に傾く時)・・・湿気をとり、気のめぐりをよくする。

方剤は・・・
①参苓白じゅつ散加当帰川きゅう
②固陰煎加牛膝当帰
③小営煎
④膈下逐お湯
⑤温経湯(寒に傾く時)、丹渓治湿痰方(湿に傾く時)

『数ヶ月生理が来ない状態』。元々そういう体質でない限りこの状態は正常ではありません。放っておくと、不妊症や更年期症状が強く出ることにつながることもあります。漢方薬を上手に使い、必要な場合は『漢方薬による周期療法』も取り入れて、正常なリズムを取り戻すと良いでしょう。

       ~国際認定中医師 鳥居英勝 ~

生理痛で悩む女性は多いようです。
中医学では、生理痛を次の4つの形に分類しています。
①気滞血お型・・・ストレスが主な原因
②寒湿凝滞型・・・冷えが主な原因
③気血両虚型・・・栄養不足が主な原因
④肝腎陰虚型・・・元々の体質と、ストレスが主な原因

それぞれの特徴は・・・
痛みの程度
①生理前や生理中に下腹部に脹痛があって、押すと痛い。
②生理前や生理中に下腹部に冷痛があって、温めると痛みは軽減する。
③生理中や生理後に下腹部に連綿とした痛みがあって、押すと楽になる。
④生理後に下腹部が痛む。

経血
①量は少ない。色は紫暗。血の塊が混じることがある。
②量は少ない。色は暗い。血の塊が混じるか、黒豆の煮汁のような感じ。
③量は少ない。色は淡い。性状は希薄。
④量は少ない。色は淡い。性状は希薄。

舌の状態
①色は紫暗で、黒っぽい斑点があることがある。
②色は黒っぽい。白くて厚い苔がある。
③質感は淡い。薄く苔がはっている。
④質感は淡い。薄く苔がはっている。


①弦渋有力。
②沈緊。
③細弱
④沈弦細

その他の特徴
①胸が張って痛い。
③顔色は蒼白。精神倦怠。
④腰がだるく足に脱力感。眩暈耳鳴り。顔色が暗い。

治療方針は・・・
①行気活血・去お止痛・・・気と血のめぐりをよくする
②温経去湿・活血止痛・・・血を温めて、余分な水分をとる。同時に血のめぐりをよくする
③補気養血・和中止痛・・・気と血を増やす
④調補肝腎・・・肝と腎の陰を補い、からだのバランスを整える

使用する方剤は・・・
①八物湯
②少腹逐お湯加蒼じゅつ・ぶく苓
③黄ぎ建中湯加党参・当帰
④調肝煎             など

最近の若い女性をみると、寒い時期でも短いスカートをはいていたり、朝食を摂らなかったり、また仕事でのストレスなど、身体に負担のかかる生活を送っている方が多いようです。このような生活スタイルが続くと、生理痛だけではなく、生理不順・子宮内膜症・子宮筋腫・不妊症など、もっと深刻な症状に発展する心配があります。
生理痛があってもなくても、また生理痛がある場合どのタイプの生理痛であっても、『ストレスをためない、身体を冷やさない、バランスの取れた栄養を摂る』ことが大切です。
毎日の生活の中で注意すると良いでしょう。

       ~国際認定中医師 鳥居英勝~

 

細胞内の小器官である“小胞体”は、虚血・アルツハイマー病・パーキンソン病などの神経変性疾患の病態生理上重要な役割を担っていることが分かってきました。
小胞体環境の維持は、神経細胞の生存だけでなく神経細胞としての機能維持にとってきわめて重要であるといわれています。

小胞体に虚血などの環境ストレスが加わった場合、小胞体内には多くのストレス蛋白が誘導され、その機能を守ろうとします。神経疾患だけでなく、小胞体環境の悪化に伴う細胞死が、糖尿病や動脈硬化、心臓虚血など多くの生活習慣病でもその病態に深く関わることが分かってきました。

神経系だけでなく疾患における小胞体環境維持の重要性を示し、代替医療による小胞体環境制御法についても議論されています。
      2004年度 日本補完代替医療学会学術集会発表

       ~薬剤師 鳥居英勝~

最近マスコミでも取り上げられているメタボリックシンドローム。高脂血症・高血圧・糖尿病・肥満を
放っておくと、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高くなるので要注意です。

脳梗塞や心筋梗塞など、虚血性疾患のリスクを高める主役的な原因は、動脈硬化です。
その動脈硬化を予防するには、活性酸素除去が大切だということが分かってきました。

ビタミンC・E、カロテノイド、ポリフェノールなどの抗酸化物質は、悪玉コレステロールLDLの酸化を抑制し、動脈硬化の予防に働きます。
これにより、動脈硬化性心疾患の発症率が有意に低下したとの結果が出ています。

赤ワイン・ココア・緑茶などから1日30mg以上のポリフェノールを摂取することでこの効果が期待できるようです。
『トマトが赤くなると医者が青くなる』などといわれるのも、トマトに含まれるリコピンが活性酸素を除去
し、様々な病気を予防するからだと考えられています。

日本の食文化は、元々活性酸素除去成分を多く摂取できるするようにできています。緑茶などはその代表的な食品です。
毎日の食生活に『抗酸化物質』を積極的に摂り入れる
と良いでしょう。

       ~薬剤師 鳥居英勝~