『月経痛』いわゆる生理痛については、『生理痛の中医学的分類』19/4/11にタイプを記してあります。
ここでは、周期療法における生理痛の対処法を記します。

・月経期に活血剤を服用する
※血のめぐりが悪い場合は、常に活血剤が必要になる場合もあります。

これと合わせて、それぞれの周期に必要な漢方薬を合わせて用いることが大切です。

       ~国際認定中医師 鳥居英勝~

『抗精子抗体陽性』この状態では、受精がうまく進みません。この場合には、次の対処法をとります。

①感染症や炎症が原因の場合→炎症をとり、利尿させ、血のめぐりを良くする。
※場合によっては抗生剤を併用します。

②腎陰虚から陰虚火旺が起きている場合→腎陰を補い、虚熱をとる。

③腎虚と気虚がある場合→腎を高め、気を補う。
※お血がある場合は活血剤を用いる

       ~国際認定中医師 鳥居英勝~

『高プロラクチン血症』この状態ですと、卵の発育が低下し、不妊症の原因になる場合があります。

この場合には、次の対処法をとります。

・周期療法に、炒り麦芽や芍薬甘草湯を取り入れる。
※炒り麦芽と芍薬甘草湯には、プロラクチンの分泌を抑える働きがあります。

また、肝欝がある場合、月経前に疏肝理気を用いることでスムーズな月経を促します。

高プロラクチン血症のサインとして、『卵胞期の基礎体温が不安定になりやすい。』ことがあります。
低温期の基礎体温が不安定な場合には注意が必要です。

       ~国際認定中医師 鳥居英勝~

『無排卵月経』生理があっても排卵を伴わない状態です。
この場合は、次のような対処法をとります。

①基本的に卵胞期の薬を使う
・・・これによって、元気な卵子が造られるよう促します。
②出血期には月経期の薬を使う
・・・これにより、育った卵子がすっきり排卵されるよう促します。

※卵胞が育っているのに排卵がない場合には、“活血化お”を合わせて施します。
これによって、スムーズな排卵を促します。
体温が一相性で波がある場合には、無排卵の可能性があります。

       ~国際認定中医師 鳥居英勝~

すでに“閉経”のところで記してありますが、無月経すなわち『くるべき生理が来ない』状態は、色々なタイプに分類されます。またそれらが複雑に絡み合っている場合も多く見られます。

ここでは、『元気な卵子を育てて生理を回復させる』観点からの漢方療法を記します。

この場合、まず
①『お血』と『痰湿』を考えます。
そして、
②卵胞期に大切な薬を使い、卵胞を育てる方法をとります。
さらに、
③おりものが増えてきたら、補陽活血促排卵を用います。

以上が、周期療法での『無月経』のスタンダードな考え方です。

臨床においては、この考え方のみにとどまらず、合わせて『体の基礎作り』を施すことで、正常な生理が回復する結果が多く見られます。

       ~国際認定中医師 鳥居英勝~

排卵誘発剤の使いすぎにより、卵巣が腫れることがあります。これによって現れる症状を卵巣過剰刺激症候群とよびます。
卵巣過剰刺激症候群には次の3つのタイプがあります。

①水湿・痰湿タイプ
この場合、気を補って余分な湿を取り除きます。
②お血タイプ
この場合、血のめぐりを良くして血の滞りを取り除きます。
③気陰不足
この場合、気を高めて陰液を増やすことにより、体のバランスを整えます。

これらの状態では、排卵誘発剤を継続することはお勧めできません。無理に使い続けると、卵巣の過剰刺激による副作用が出たり、卵巣の反応が悪くなりいくら刺激しても排卵しない状態を引き起こしかねません。

この場合、漢方薬により卵巣の状態を整えることが大切です。
その後漢方薬による周期療法と、必要に応じて排卵誘発剤を併用して、体に無理のない排卵を促すと良いでしょう。

       ~国際認定中医師 鳥居英勝~

排卵誘発剤治療によって、次の症状が出ることがあります。

①基礎体温の高温期が高くなる。
②体重が増える。
③おりものが減る。
④月経量が減る。

①は陰虚火旺による症状です。この場合、一時的に休薬して補腎陰剤を服用すると体のバランスが整います。

③④は子宮内膜が薄くなったサインです。この状態を放っておくと、血虚と血おにより着床しずらくなるのでしかるべき対応をとるべきです。まず。一時的に休薬し、月経期に活血剤、卵胞期に補陰補血を施すとよいです。

       ~国際認定中医師 鳥居英勝~

黄体機能不全(黄体ホルモン分泌不足)が起きている時は・・・
①腎の機能を高め、温かな子宮環境を保つ
②気血を補う
方法をとります。
これを『温補腎陽・益気養血』といいます。

周期療法を行う場合、
高温期:腎陽を高めて子宮を温め、子宮内膜をやわらかくする。また、気血を補う。
低温期:腎陰を補って卵胞の発育を助ける。また、血を補う。
方法をとります。
※黄体期の調整でうまくいかないこともあります。その場合、卵胞期に卵胞が十分に発育しなかったことが原因である場合があるので、卵胞期に腎の機能を高め、卵胞の発育と成長を助ける漢方薬を用いると良いのです。
また、ストレスを受けて体温が上下したり、PMSが発現する場合には、理気を施します。

高温期が11日以下と短かったり、体温が上下して安定しない。高温期に入って4~5日目に体温が下がる。高温期の体温が低かったり、低温期の+0.3℃未満などの場合、黄体機能が低下していることがあります。

       ~国際認定中医師 鳥居英勝~

排卵障害が起きているときの対処法は・・・
①腎の機能を高める
②気と血のめぐりを改善する
方法をとります。これらを合わせて、『補腎活血促排卵』といいます。
※原因が卵胞の発育不良の場合は、卵胞期から調整する必要があります。

低温期から高温期への体温の移行が、だらだらと階段式に3日以上かかったり、排卵期に強い痛みがある場合は、『排卵障害』が起きている可能性があります。

~国際認定中医師 鳥居英勝~

何年か前に、中国で生産された生薬に残留農薬が含まれていたことがニュースになったことがあります。
今、日本で使われえている漢方薬(医薬品)は安全なのでしょうか?

結論を言うと、安全です。
漢方薬の原料は生薬です。産地は主に日本と中国。それ以外にも東南アジアや中南米から輸入されるものもあります。
製薬会社は原料調達の際に、『残留農薬が基準を満たしている』ことの証明書がついた生薬のみを生薬卸業者から調達しています。
そして、製剤後の漢方薬についても必ず検査をして、基準をクリアーしていることを確認しています。

具体的には・・・
・原料調達の際に、『要注意とされている12種類の生薬』についての証明書を確認。
・上記の12種類の生薬を含む漢方薬については、製剤後に全て検査を行う。

ここで、12種類を含まない漢方薬についての安全性が気になりますが、『12種類を含む生薬について安全が確認されれば、そこに含まれる12種類以外の生薬の安全も確認できたことになり、それを考えると全ての漢方薬が安全といえる』と判断されるようです。

以上のことから、日本で医薬品として認可されている漢方薬は、安心して服用することが出来ます。

今後、基準が厳しくない健康食品レベルの生薬製剤についての安全基準も強化されて行くことと思います。

       ~国際認定中医師 鳥居英勝~