» 2020 » 7 月 » 21のブログ記事

我が家で育てているクロオオアリの卵が孵化しました。産まれたばかりの子アリは、女王アリに守られながら卵の上をちょこちょこ歩いています。

女王アリの寿命は大体10年位。息子から聞いて驚いたのですが、女王アリはお腹に精子を貯めておいて、生きている間に何回も産卵するそうです。

交尾するのは羽化後の短い期間だけなのに、どうやって何年もの間、精子を活きた状態で保っているのかなと、とても疑問に思います。

そこで調べたところ、甲南大学理工学部生物学科細胞研究室で女王アリの精子貯蔵能力について研究されていることが分かりました。そのHPによると・・・

女王アリは、羽化後の限られた時期にオスと交尾し、女王はその時に受け取った精子を精子貯蔵器官である袋状の「受精嚢」に寿命が続く限り貯蔵する。そして産卵時に必要な数の精子のみを取り出して、受精させている。

受精嚢の中で10年もの長い間精子を保存できることには、抗酸化酵素、タンパク質、イオン、糖輸送体、遺伝子など、様々な要因が関わっている。

アリの精子にも特徴があり、交尾後、精子は運動しないで受精嚢まで到達する。動かないことは、物理的な損傷を避けたり、活性酸素の産生による精子細胞へのダメージが発生するリスクを避けることになる。そして、精子はじっと動かないままで何年も留まる。

受精嚢内の精子は交尾後5年経過していても不動化されていて、その時点で受精嚢外に取り出したところ運動したことが確認されている。このことから、女王アリが精子のべん毛の機能を保ったまま生存させていることがわかっている。 以上

・・・人間の精子は、凍結しないと数日でダメになってしまいます。一方で、アリの精子は常温で何年間も活きつづけることができます。アリと人間は違う生き物なので、完全に人間に適用することは不可能だと思いますが、女王アリの精子貯蔵機能とオスアリの精子の科学を詳しく解明できれば、人の新たな精子保存技術の開発につながるかもしれませんね。

~薬剤師 鳥居英勝~