今朝のNHKのニュース番組で気になる報道がありました。それは、『学生の女性スポーツ選手にアンケートを取ったところ、無月経から疲労骨折に至るケースが多い。原因として、過度なダイエットが考えられる』というもの。陸上の長距離選手など、激しい減量を要するスポーツ選手には多く見られる一方で、バレーボールなどダイエットの必要がない競技に取り組む選手では割合が少なかったと解説されていました。

これを東洋医学的に分析すると、次のようになります。過度なダイエット=気血を消耗する⇒さらに激しいトレーニング⇒さらに気血が消耗・・・ここで栄養と休息をとって養生しなければいけないところで無理を重ねると⇒気血が回復せずむしろ陽気陰液を損耗⇒腎精が虚してしまう。

腎はホルモン、生殖器、骨を司ると考えます。無月経はまさにホルモンバランスの崩れからの生殖器のトラブルですし、疲労骨折は女性ホルモンによる骨を守る力が弱まることによる骨密度低下によるものです。共に腎虚で起きる症状です。

このように、『過度なダイエット+激しい運動をする選手が、無月経から疲労骨折に至ること』は、東洋医学的にはきれいに説明がついてしまいます。さて、問題はこのような症状に至った方たちが、今後どのような経過を辿るかということです。

月経のトラブルがあるわけですから不妊症に至ること、骨密度低下があるわけですから骨粗しょう症になりやすいこと、このことは容易に想像がつきます。さらに怖いのは、頭の働きの低下です。腎精不足で現れる症状には段階があります。最初はホルモンバランスの崩れによる月経の異常など機能的トラブル、次の段階では骨密度低下など器質的トラブル、そして器質的トラブルの最後には脳の働きの低下がまっています。すなわち、放っておくと集中力低下や学習能力の低下、ゆくゆくは認知機能の低下になりかねません。

若いスポーツ選手は、今が大事で結果を求める。これは当然のことです。若さゆえ怖いもの知らず、何年もあとの体のことは、気になっても今を優先してしまう。それはわかります。ただ、『後々の健康のために、栄養と休息がとても大切である』ことは認識してもらいたいと思います。このことは、選手を指導する立場の人が着目して、指導すべきことかも知れません。

無理をしてひどくなってからでは、手遅れになる場合もあります。生理機能の不具合や骨密度低下は、ホルモン剤や骨粗しょう症薬を飲んでもなかなか正常にはもどらないことも多いようです。早い時点での養生が何よりも大切です。

☆スポーツ選手に限らず、過度なダイエットをすることは同じ経過を辿ることになりかねません。注意が必要です。☆

☆☆☆不具合を起こさないための予防、起こしてしまった後のケアーには、東洋医学的治療が功を奏すると考えられます。消耗しそうな、あるいは消耗してしまったもの(気血陰陽)を補い、栄養素をしっかりとる。もちろん毎日の食事と休息も大事。これらが基礎となります。必要な場合には、そこに治療薬が合わされば相乗効果が得られるでしょう。何度も言いますが、早い時点からの養生が大切です。☆☆☆

~薬剤師 鳥居英勝~