いま、体がどうしようもなくだるい慢性疲労性症候群をもっている患者がいたとしよう。彼の苦しみは、現在の西洋医学の血液検査や化学検査では、細胞や成分の数値の変化としては現れ
ない。でも、患者はつらく、苦しい。病気を持っている個人であることは疑いない事実である。そのとき西洋医学はなすすべを知らない。数値、すなわち細胞や分子に還元した指標に現れない場合は、医療の対象にならない。
また、現代医療では治療法のない難病でも事情は同じだ。患者の苦しみは数値では示され
ない。患者全体が病気の現われなのだ。部分である数値を治療対象としたのでは、患者の苦しみは救えない。
それに対し、代替医療は数値に表れない患者の苦痛を救うために活躍する。要素しか見えない西洋医学に対して、個体の疾患として病気を考えるという観点を持っているからである。
東洋医学や伝統医学を含めた、代替医療の対象は、数値で表すことのできない、病気を持った患者個体である。病気の徴候を数値に頼らない全体の関係性の中に発見し、それを実践する所にあるのではないだろうか。東洋の医学、たとえば漢方や、アーユルヴェーダの診断や治療法
には、その理論と実践の良い例がある。
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